二人ほどが並べる幅がある列に僕は入った。
二人並んで進んだとしても、発行するのは一人ずつなので、結局進むのが遅い。
どんなルールで処理をしているのか分からないが、僕の前が進んだり、隣の人たちだけが進んでみたりと、完走証の発行はランダムに行われているようだ。
しばらくすると僕の列自体が動かなくなった。どうやらプリンターの故障らしい。。。
渋滞ながらも少しは動いていた人の流れが急に止まり、前の人との間隔が詰まってくる。その詰まる流れで、またしても隣だけが前方に進んでいく。
どう見ても流れがいいのは僕の隣。
羨ましく思っていると、僕を通り過ぎてすぐに振り返った人がいた。
そして話しかけてきた。「あぁ、やっぱり! この間はどうも。」
なんと先日の二ツ井マラソンで声を掛けてくれた年配の男性だった。
こんな所でまた出会うなんて奇跡みたいなものだ。
前回の出会い↓
前回は秋田県内だったが、今回は山形県天童市まで来ていた。
7000人を超える規模の大きな大会で、会場のどこもかしこも人でごった返している。
それもそのはず。集まるのはランナーだけではない。出場するランナーの家族や関係者も同伴している。人数だけなら一万人は超えているかもしれない。
『DNソフトスタジアム山形』という、プロサッカーチームのモンテディオ山形がホームグラウンドとして使用している場所が主会場。
駐車場も5000台以上が確保され、いかに大きな大会であるかが分かる。
この規模の大会では、知り合いと出会う事すら稀。たとえ同じ会場にいたとしても、連絡を取り合っていなければ、ほとんど遭遇することは無い。
なのに、また会えるなんて、まさに奇跡。
「私はイセキといいます。もしよかったらお名前を・・・」
「ミフケタといいます!」
僕は興奮して、ちょっとかぶせ気味で名乗った。
進まない列が、僕たちにとっては丁度いい時間を作ってくれた。
その年配男性はやはり、同じ秋田県の人でなんと僕の叔父さんと知り合いだった!
話はますます弾んだ。今後の大会出場予定や、これまでに出た大会をお互いに教え合ったり。
そうるすと今度は、僕の前の男性が振り返った。「その大会、僕も出ました!」
僕と年配男性が口にした『メロンマラソン』は、真夏に行われる過酷なハーフマラソンで有名。その大会に反応したのが、その人だった。
今度は3人で話が弾んだ。振り返ったその人は東京に住んでいて、なんとわざわざ今日も車で来たようだ。山形どころか、秋田県内の大会であるメロンマラソンにまで、来てくれている。
3人で盛り上がっているうちに、代替えのプリンターが用意され、完走証の発行が再開された。
年配男性とは今回で2度目。東京の男性とは初対面である。
どちらも、共通の知人を介しての紹介でもなく、たまたまその場に居合わせただけの繋がり。
やはりマラソンとは、不思議な一体感をもたらしてくれる素敵なスポーツだ。
前回の記事の一部を繰り返させてもらいたい。
たかが趣味の集まりなのに、見ず知らずの人たちを一瞬でも『仲間』だと感じさせてくれる、友達のように『親近感』を感じさせてくれる、時には『恋人』のようにサポートし合える、こんな気持ちを共有できるスポーツがマラソン。
スタートしてしまえば、誰の手も借りることは出来ない。最後は苦しさに、辛さに耐えて一心にゴールを目指す。
皆同じなのだ。同じ気持ちなのだ。このことが『不思議な一体感』を与えてくれる要因なのかもしれない。
「それではまた今度!!」
1人ずつ完走証を手にして、互いに挨拶を交わし、その場を後にした。
もう二度と会わないかもしれない、もしかしたらまた会えるかもしれない。そんな、約束を交わさない最後の挨拶が、少しだけ切なかった。
「今日も素敵な出会いがあったな」
なんだか本当に嬉しくて、ちょっぴり期待ハズレ・・・
良い奇跡が続きますように!
少しでも誰かの心に響けたら!!
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。