2019-11-01から1ヶ月間の記事一覧
「住所教えてもらえれば、携帯見ながら向かいます」 11月の夕方は日暮れも早くて寒い。 厚着をし、僕は田山さんの家に向かった。 少し高級な日本酒と、友達に教えてもらったワインを背中のバッグに入れて、自転車をこぐ僕は、ちょっぴり不安を感じている。 …
子供にとっての母親がいなくなり、僕にとっての妻がいなくなり3年と5か月。 ドラマで見るような、アットホームな家族団らんの時間や、「あれ取って」だけで伝わるような成熟した家族模様からは程遠いが、離婚を期に我が家には静寂が訪れた。 心配事と言った…
恐ろしいほど素晴らしい映画を観た。 しかし、そのレビューを書くつもりはない。 今回は少しカミングアウトな内容になる。興味のある方だけ、読み進めて頂きたい。 恐ろしいほど素晴らしい映画を観たが、なぜか僕はその素晴らしさを表現することが出来ない。…
離婚して4年が経過した。 『キツさ』も徐々に和らいで、やっと普通に「離婚しました!」と元気よく、他人に言えるようになった。僕から切り出した離婚だ。未来の展望も夢も希望もあった。計画を練りに練っていた。大きなもめ事にもならなかった。 なのにあ…
一緒に布団にくるまっている猫を起こさぬように、そっと左の脚からベッドを下りる。カーテンの隙間から漏れる明かりだけでは、暗すぎてドアを目視することができない。 でも、とっくの昔に壊れてしまった足元灯を取り換えるつもりはない。 夜の夜らしさを感…
わりぃけど、俺の方が上だから 大人げない自分の感情に苦笑いしながら息子の話を聞いている。 紆余曲折があり、4年生の医療系専門学校を自主退学して、今年の春先に就職した息子。 志した道とは全く畑違いの職種。 「おい!金返せ」だなんて、言っちゃあいけ…
息子が2歳の時、風邪をこじらせて入院した。今から20年近く前の話。 その日の僕は、先輩と約束があり飲みに出かけることになっていた。 病院に付き添う妻と、風邪で苦しむ息子に、申し訳なさを感じながら、しかしどうしても先輩との飲み会を断ることはできな…
二人ほどが並べる幅がある列に僕は入った。 二人並んで進んだとしても、発行するのは一人ずつなので、結局進むのが遅い。 どんなルールで処理をしているのか分からないが、僕の前が進んだり、隣の人たちだけが進んでみたりと、完走証の発行はランダムに行わ…
「ありがとうございました」 突然声をかけかれた。 その時の僕は、膝に手を当てて下を向き、最大級の悔しさが、落胆が体の中で爆発し、それが、そのエネルギーが体外へ放出しないように、目を閉じて周囲を遮断し、暴れる獣を押さえつけている時だった。 振り…