雨のち いずれ晴れ

ホントは寂しがりやのシングルファザーが叫ぶ! 誰かに届け!誰かに響け!!

残暑はるばる

なにもかも上手くいっている。文句のつけようがないほどに。

突然の災いも、特別な幸運も、一切起きない凪のような日々だ。

 

 

朝は納豆かベーコンエッグ。納豆には生卵を混ぜ、小ねぎをたっぷりのせる。ベーコンはブロック状のものを購入し、その時の気分に合わせて好みの厚さで切る。

自分用の昼ごはんにおにぎりを作るときには、息子の朝食用に一つ多めに。

 

少なくなった頭髪を整髪料で無理やり元気にして。この時間が本気で嫌になったとき丸坊主にしようと鏡の自分をみつめる。

 

決まった時間に車に乗り込み日課となったライン電話で彼女の機嫌を取りながら出勤する。道中には電波状態が悪いところを必ず通過する。通話を辞めればいいものを二人して律義に音声が回復するのを待ち僕が会社に到着するまで電話を切ることはない。

若いカップルでもあるまいし、いい年したおじさんとおばさんが今現在こんな感じなのだとははずかしくてとても言えない。

毎日のこれが僕はめんどくさいが彼女に伝いえる勇気は無い。

 

 

仕事は辛くもきつくもなく、ビブラートのような小さな気持ちの波をおこすばかりで一日があっというまに過ぎていく。ビジネススマイルも板についてきた。

今年の四月に念願だった保育士になった娘は、相変わらず彼氏と同棲中。こちらから連絡しない限り一切の音沙汰がない。元気なのか?とラインをしても不思議なスタンプが返ってくるだけ。

 

 

海沿いに住む僕には、フロントガラスから見える全容を露わにした入道雲の壮大さに感動をおぼえる。少しは雨でも降らせてほしい。数年前から膝の痛みをかかえたままでマラソンを続けているのだから、この暑さだけでも緩和されたなかで走りたいものだ。

 

 

週に一度顔を出す小料理屋には見知った顔が座っている。今月定年を迎えるテレビマンとの会話はいつでも楽しく、ばかばかしく、ゆかいで、でも気持ちが引き締まる。

経験の豊富さ引き出しの多さは会話の中からいちいち感じられて、こんなおじさんになるのだと、自分の道を再確認させてくれる。

 

 

ほろ酔いで家路につくと玄関先で猫が迎えてくれる。猫のために今年から一日中エアコンをつけっぱなしにした。昨年とはうってかわってしっかりと残さず食事をしてくれる。

去年は悪いことをしたね。夏バテだったんだね。君ももう老猫なんだもんね。あおむけでゴロゴロと鳴らす君をなでてるこの時間が一番だよ。

抜け毛だらけのリビングを見てもこの愛おしさは微塵も変わりはしない。

 

リステリンを口に含みながらシャワーを済ませ歯磨きをする。

エアコンの無い寝室は窓を開けても涼しくならない。リビングのソファーは寝心地が悪い。深い眠りが必要な時はこの寝室でアイスノンを抱いて寝る。

 

今年は花火をしなかった。火薬のにおいが懐かしい。

 

 

この夏は唯一無二の夏。二度とこない今の夏。

 

ちらほらと聞こえ始めた鈴虫の声を聴きながら僕は眠る。

 

さて、次は秋だな。