雨のち いずれ晴れ

ホントは寂しがりやのシングルファザーが叫ぶ! 誰かに届け!誰かに響け!!

墓場まで持っていく話を聞いたら吐き気がした【夫編】 第六話

ここまで淡々と書いてきた。少しでも早苗と健吾の関係性を伝えたくて。

全てはこの画像の為である。この画像を見て頂きたかった。

人間とは、女性とは本当に怖い生き物である。

不快な思いをされる方もいらっしゃるかもしれない。しかしこれが現実なのだ。

これが人間なのだ。

 

※この話の続き

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健吾からのラインを開いたとき。画像を見た時、直ぐには意味が理解できなかった。

三回読み込んでやっと事の重大性に気づいた。

まさか、まさかだろ・・・こんなこと現実に起こることなのかよ・・・

健吾から送られてきた画像はあまりにも突飛すぎて、現実離れしていて。

「こ、これ何?」

僕はこれしか言葉を返せなかった。

 

 

 

僕がラインを見て凝視して、三度も読み返して目が携帯から離せなくなっている時、健吾は焼き鳥を注文していた。

ネギ間、せせり、やげん軟骨、レバー、シイタケ・・・注文が続いていく。

おい!もう食べれないぞ!と言おうとして僕が携帯から顔を上げた時、「全部塩で」と店員に伝え終わった健吾は「悪いけど今日は割り勘でいいか?」と僕の方を向いた。

 

割り勘で構わないし、いつも割り勘じゃないか。なんでそんなこと聞くんだよ。

あぁ、そっか。今日は自分の為に、相談をするために飲みに来たから気を使ってくれたのかな。

 

「そんなことどうでもいいけいど、これ何?」

僕はもう一度健吾に質問した。僕の質問が聞こえているのかいないのか。健吾はまた店員を呼び止め、今度はメガハイボールを二つ注文する。そして左を向いて窓の外を眺めた。

 

健吾が見ている窓の外には何も見えない。店内が明るすぎてガラスに反射して、外から入ってくる弱い明かりはかき消されている。僕も健吾の顔が向いている方を見てみたが、僕たちの頭の上に吊るされたチョウチン型の照明が鏡のように写っているだけだった。

窓の方を向いたまま健吾は「早苗には出ていけと伝えてある。もう離婚は確定なんだ」と言った。

何だか話の方向が変わってきた。

元はと言えば健吾の浮気が発端で、そこから束縛し合い二人の関係性が悪化。妊娠中の健吾の不倫を機に夫婦仲は冷めきり現在は家庭内別居状態。

早苗と健吾のここまでの話をまとめるとこのようになる。過失は健吾にある。それなのになぜ健吾は早苗に出ていけといったのか。なぜ離婚は確定なのか。

 

時間は間もなく21時にさしかかろうとしている。店内にはまだ客が多く賑わいは収まりそうにない。店内のガヤガヤした音は今日の僕たちにとって都合がいい状態だった。

メガハイボールを二人して受け取ったタイミングで健吾はまた話し始めた。

 

「早苗さ、ずっと不倫してるんだ」

健吾の言葉の意味する『不倫』とは僕の定義と一致するのか分からないが、とにかく早苗は健吾以外の男と大人の遊び以上の関係を持っていると理解した。

 

健吾曰く、どうやら早苗は結婚当初から男遊びが好きで、健吾の目を盗み、騙し不貞行為を繰り返していたようだ。発覚するたび喧嘩し、和解し二人で歩むことを約束してきた。なぜ健吾は和解できたのか?それはやはり自分の浮気と不倫があったから。早苗の不貞が発覚するたび早苗は、「あなたが悪い」とその都度健吾の過去を責めた。「仕返し」だと言った。「妊娠中の不倫なんて最低だ」と言った。そうなると健吾は黙るしかなかった。

ここ数年、家庭は荒れている。このような状況になってきたとき、二人を案じてなのかさらに悪化させたいのかその意図は分からないが、早苗の行いが健吾に伝わるようになってきた。早苗の周囲の人間から。早苗の不貞行為は健吾に発覚した事柄より多かった。

自分の束縛を取り去ろうと、過去を反省し真面目に生きてきた健吾。友達もいなくなり家庭に閉じ込められてもなお、さらに家庭を大事にしてきた健吾。早苗を信用してきた健吾。でも実のところ不貞を繰り返していたのは早苗の方だったのだ。

 

 

人を疑うのは、自分の心にやましい事が浮かぶから。自分が勝手にやましい事を思いついてそれをパートナーがやっているんじゃないかと不安になるから。やましい事を思いつくというのは、自分に欲望があるからなのだ。

早苗の執拗なまでの健吾への疑いはまさにこれ。早苗自身やましいことをしていたので、健吾も同じなのだろうと想像していた。

 

 

「お待たせしました!」と店員の明るい声が場違いで。。。

長い長方形の皿に塩が振られた焼き鳥が並んでいる。僕はタレ派なんだけどな。そう健吾に伝えると、「それは邪道だ」と言われた。

 

他人事だが健吾がいたたまれなくなってきた。自分だったらと、想像するのも怖い。

「さっきの写真さ、mixiのメッセージなんだよ」

そう言ってあの驚愕の画像の解説が始まった。

 

6年前、早苗と健吾は初めてご両家を巻き込んだ大喧嘩をした。その時早苗は子供を置いて家を出て行った。もちろん早苗には行く当てがあったということだ。この時健吾の不倫などが両家の両親に伝わることになる。頭が上がらなくなった健吾は早苗の不貞のことは口にせず、自分の過去の過ちだけをひたすら謝罪した。この時早苗にも健吾にも離婚の意思はなかった。だから「あとは二人で」とご両親たちの言葉を頂いたとき、早苗との関係修復の為、健吾は邁進する。

幼い子供たちが残された家庭を健吾は一人で家事をこなし仕事をし、早苗を待った。

一か月程度の期間であったが、それは健吾にとって途方もなく長い時間に感じられた。

携帯にも出ない早苗のことが心配になり、ずっと昔に使っていたmixi経由で早苗の友達にメッセージを送った。少しだけ家庭の事情を説明した。じゃないと早苗の味方であるはずの友達は教えてくれないと思ったから。だって完全に健吾が悪者扱いされているだろうから。

そんなに深くまで説明していないはずの健吾のメッセージに早苗の友達は何を勘違いしたのか驚愕の内容が返ってくる。その返信で健吾は、驚愕の情報に触れる。

 

 

 

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早苗には仲良し四人組がいる。その中の一人とメッセージをした。その返信の一部がこれ。最近早苗と女子会を開いたときのことのようだ。

 

寝耳に水である。そんなことがあったなんて知りもしない健吾。

このメッセージを読んだ健吾は体の震えが止まらなくなったそうだ。職場のディスクで昼食をとっていた手が止まり、震える体を押さえて、訳も分からず車に乗って会社を出て、近くのコンビニで気持ちが落ちつくまでじっと時間が過ぎるのを待った。

 

 

 

この日を境に健吾の気持ちは変わった。早苗が家庭に復帰してからも離婚を前提に早苗に接するようになる。

自分の過去の不貞のせいで早苗との関係が悪化していると思っていた健吾の気持ちは一変した。自分の家庭が荒れている根本原因は自分だと思っていた健吾の気持ちは変わった。いつまでも過去の過ちを責め続ける早苗に、そのことを理由に仕返しだといって不貞を繰り返す早苗に諦めが付いた。

健吾の早苗に対する愛は消えた。

 

関係修復を目標にしていた健吾の態度が一変したことに気づいた早苗は歩み寄りを見せてきたが、時すでに遅し。

 

 

 

あの日から6年。

あのメッセージから6年経過する間に健吾は着実に離婚に向けて準備を進めてきた。そして今この時、準備は整った。

親権を早苗に渡す気は無い。これからきっと早苗と健吾は裁判になる。とても協議離婚で納まる内容じゃないから。

 

 

 

早苗はメッセージを知らない。

健吾の『墓場まで持っていく話』が公衆の面前で表ざたにならないことを祈る。

 

 

 

おわり

※あとがきに続く

 

 

 

少しでも誰かの心に響けたら!!

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。