僕ら仲良し6人組の一人におめでたいことが起きた。
仲良しと書いて『親友』とも言う仲間にだ。
6人全て同じ年齢であるから、今年43歳を迎える。そのうちの一人が遂にお父さんになった!
おめでとう!
結婚してからしばらくたっても妊娠の話がなかったから、最近では冗談ですら話題に上がらなくなってたね。
おめでとう!
結婚10年目で遂に妊娠。自分のことのように嬉しかった。きっとみんなも同じはずだ。
おめでとう!
奥さんは一つ年下。高齢出産だよね。妊娠初期に出血して緊急入院したとの話を聞いてから、簡単に「順調か?」なんて聞くこともできなくて。
無事に産まれて、本当に良かった!
コロナが無ければ、飛んでいきたいこころだけど今はやめとくね。どうやら面会も制限されてるようだし。
それにしても奥さん、本当に頑張った。不安と期待を内に秘めて痛みに耐えてよく頑張った。
奥さん想いで優しい春樹のことだから、万全の対応はするの分かってたけど、お節介なラインんしてごめん。
恒例のバーベキューのとき、お前がどんな顔して子供を抱いてくるのか楽しみでしかたないよ。
大昔、一緒になってやんちゃしてた春樹が遂にお父さんか。しかも女の子だなんて。笑っちゃうよ。むかし泣かせた女の親の気持ちを思いしれ(笑)
今の僕の、女子高生の父親の心配を体感してくれ(笑)
いやいや僕は実に愉快だよ。
実はさ、本当はさ、今すぐにでもそっちに行きたい。
実は春樹に尋ねたいことがあるんだ。
あの時僕はどんな顔してた?
ほら、僕に第一子が産まれたときだよ。僕、どんな顔してた?
21歳の若造がデキ婚して、自分だって、ついさっきまで同じ姿だったはずの赤ちゃん抱いてた僕はどんな顔してた?
春樹から無事に子供が産まれたと知らせが来た時、嬉しさの後からこの疑問が同時に浮き上がってきたんだ。
デキ婚して長男が産まれて、次は長女が産まれて。そんな彼らも大きくなって。でも僕、離婚しちゃって。シングルファザーも板についてきた今だからやっと当時の自分を冷静に振り返ることができるようになった。
第一子が産まれてからずっと、いや、結婚してからずっと僕はパニックだった。冷静じゃなかった。仕事と家庭と子育てを、周囲の冷やかしの目を浴びながら必死に生きてた。
当時は今よりデキ婚に冷ややかだった。子供が子供を育ててるって、そんなニヤついた視線をいつも感じてた。僕は『普通』の父親とはみなされてなかった。
立派な親になろうと思った。立派にならなきゃダメなんだと思った。じゃなきゃあのニヤついた視線が今度は子供に向けられてしまう。
なぜだか当時は、他の家の父親たちの背中が、大きく見えていた。強そうに見えていた。
どこにいってもいつの年代でも僕は、一番若い父親で。
とにかく、とにかく必死だったんだ。他の家の父親に負けないように。
ずっと、ずっと必死だったんだ。周囲が見えないぐらいに。
僕の時、出産祝いを頂いたよね。ちゃんとお返ししたっけ?
他の三人に子供が産まれたとき、出産祝い渡したっけ?多分、渡してないような気がする。言い訳だけど、給料安くて貧乏だったんだ。これ本当だから。
なんかみんなにも申し訳ない気がしてきた。きっとお前らなら笑って許してくれてるだろうけど。とりあえず、全てをひっくるめて、みんない言いたい。
「ありがとう」
離婚して4年。今だからやっと振り返れる過去。
今は遂に本当の自分に戻れたような気がする。「色々あったな」って受け止められる。
春樹。今どんな顔して子供抱いてる?
普通のお父さんはどんな顔して子供抱くんだ?
出産祝い用意しておくから、なるべく早く顔見せろよ。
少しでも誰かの心に響けたら!!
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。